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道具の話

第334回 鈴木 徹 (2026.2.05)

先日近所の居酒屋さんに行った時の話。

そこは今まで行った事はなかった店なのですが、1人で入っていきました。

平日の21時過ぎと言うこともあり、お客さんは私1人でした。和食をきちんとやっていると言う感じで、メニューもシンプルだけど、手間をかけているなと言うような品がいくつか。
とりあえずお酒とお刺身の盛り合わせを頼み、カウンターから魚をさばいているところを何気なく見ていたのですが、結構良さそうな包丁をつかわれていました。
その包丁についてお聞きすると、どこそこで作られた結構良いもので、そういう包丁だから、きちんと切れて魚も美味しく出せる、と言うようなことをおっしゃっていました。

その時やはりきちんとした仕事をするのには良い道具が必要だな、と思ったと同時に自分はどうなんだろうと考えました。

今までは刃物は研ぎをきちんとやっておけば、まぁ良いだろうと思っていて、ある程度の道具であれば良いだろう思っていました。
しかし、そこの大将と話をしてから「やっぱり良い仕事は良い道具からだな」と思い、試しに1本良い平ノミを買ってみようと思いました。

少し調べてみると、◯広が良いとか、◯義が良いとか、しかもそれらはもう今は買えるようなものではなくなっているとか、いろいろな情報が出てきました。

そこで以前から話には聞いていた東京世田谷の三軒茶屋にある土田刃物店に行くことにしました。ここは3代続く刃物店でその知識経験は素晴らしいとのこと。
行ってみると小さな入り口なのですが、中は大工道具がたくさん置いてあり、その奥に店主の土田さんがいました。

自分は楽器製作や修理をしているもので、1本良いノミが欲しいと言うと、どんな作業に使うのか、大きさはなどから始まりノミを作っている人の現状や今後の行方、またノミの研ぎ方などいろいろな話をしてくれました。

そうしていろいろ話した末に1本、兵庫の三木の高橋さんと言う方が作られている九分幅のものを購入しました。

工房に帰りすぐに研いで試しに毛替えの時に使うプラグを作ってみようと思い、いつもと同じように作ってみたら、ズバッと切れて、切れ味、切り味が今までの物と全く違うのです。
木の切断面もツヤツヤでしかも小口面さえも美しくスパッと切れている。これが良い刃物、良い道具なのかと今更ながら思い知らされました。

 

ここからまた道具の沼にはまっていくのかは分かりませんが、このノミによって何か仕事の大切なことを教えられたような気がします。

良いものは使っていて楽しいし、自分を引き上げてくれると思いました。