1. ホーム
  2.  > 連載コラム
  3.  > 第184回 高橋 明 (2019.8.20)

自作のスクロールガイド

第184回 高橋 明 (2019.8.20)
高橋 明

お盆休みの真っただ中、みなさまよい休暇をお楽しみのことと思います。
私がいるイタリアのクレモナもバカンスのど真ん中、街は閑散としているのですが、私は夏休みなしで仕事をしております(泣!)

さて、今回もマニアックな治具(ガイド)をご紹介しますね。製作や修理をしている方以外は、何のことかわからないかもしれませんが、できるだけ丁寧に説明しますので、製作者はこんな工夫をして楽器を作っているんだな~と感じていただければありがたいです。

まずは2つのヴァイオリンの頭部(スクロール)の写真を見ていただきましょう。

 

 

写真Aのスクロールは、キッチリと芯が通っている感じで、バランスがよくスマートですね。
写真Bのスクロールは、なんだか溶けたように歪んでいて、だらけたような感じがしませんか?

これは一つの見方ですが、解説しますね。
下の図のようにスクロールの渦巻き部の水平部分を描きだしてみます。

 

 

写真Aは、左右の線が水平(中心線に直角)で、かつ左右の線がキッチリとつながっています。まるで一本の棒が右から左へとつながっているように見えます。
写真Bは、左右の線が水平でなく傾いており、かつ左右の線はつながっていません。まるでばらばらですね。

このように、スクロールの水平部分は外観での印象に大きく影響を与えます。
写真Bのような水平部分が歪んだ楽器が、すぐに悪い楽器だとは言えないのですが、私は写真Aのように水平できっちり作ったスクロールを作りたく、毎日製作に励んでおります。

さて、写真Aのような水平部分をキッチリ水平に作るのは、あまり簡単なことではありません。何しろスクロールは曲線の集合なので、目の錯覚などですぐに傾いてしまいます。
そこで、私はこのようなガイド(治具)を自作して、スクロール作りに活用しております。

 

 

透明のアクリル板を使ったガイドなので、写真でわかりにくいですが、カタカナの「ク」の形をしております。

 

 

アップで撮影すると、長手方向に中心線、そしてそれに直角な線が何本も引かれております。

このガイドをどのように使用するかと言うと、
まず「ク」の字型をしたこのガイドの内側に
製作途中のスクロールを入れます。

 

 

スクロールの中心線をガイドの中心線に合わせます。

 

 

正面から見て、目の高さを変えることで
スクロールの水平部分に
ガイドの水平線に合わせます。
線とスクロールの水平部分がぴったりと合っているかで、水平部分がキッチリと水平にできているか、
左右がつながっているかが分かります。

 

 

ガイドには上面や背面にも線が描かれてあるので、上面からもスクロールのチェックができます。

 

 

また、正面内側の下部に当て止め棒が付いています。

 

 

私は、このガイドをより効率よく使うために、スクロールの完成間際までスクロール下部(ネック部分)は直線部分を残したままにしております。

 

 

この直線部分をぴったり当て止め棒に当てると、わざわざ中心線を合わせなくても、自動的に直角になり、便利です。

 

 

もちろん背面からもチェックが可能です。
その上、ななめ方向からもチェックできる優れ物!

 

 

また、糸巻穴を空けるときにも糸巻の水平確認ができます。
ナットの上面にガイドの端を当てることで、水平にセットできます。(もちろんナットの上面が正確に水平になっていないといけませんが・・・)

 

 

そんなこんなで、このガイドを使って完成させたスクロールです。
キッチリ水平にできているでしょうかね?!