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バイオリン職人の休日

第10回 高田 博史(2011.06.20)

皆様はじめまして。
今回のコラムを担当させて頂くことになりました、京都嵐山にて仕事をさせて頂いております「TAKADA弦楽器工房」の高田です。

他の会員の方々が楽器についてのお話しをされていますので、今回はバイオリン職人が休日に何をしているのかをお話しさせていただきます。

日本ではモータースポーツ、とりわけ2輪はあまり取り上げられることはありませんが、クラシック音楽と同じくヨーロッパでは盛んでモータースポーツの世間一般における認知度も日本より数段高いです。

コーナーで車体を傾けた時に膝を地面に擦るのは自分が今どれぐらい車体を傾けているのかを探るセンサーの役割をしています。コーナーで車体を傾けた時に膝を地面に擦るのは自分が今どれぐらい車体を傾けているのかを探るセンサーの役割をしています。

私は10代の頃にずっとバイクに乗っていて、20代に入って車に乗るようになりバイクから遠ざかっていたのですが30歳目前にしてふとしたことからまたバイクに乗るようになり気付いたらサーキットを全開走行していました。
サーキット以外にもお客さん達とあちこちにツーリングに行ったりオフロードバイクで山に登ったりと、とても充実したバイクライフを送っています。

なぜバイクなのか?と思われる方もおられると思いますが、技術だけでもセンスだけでも駄目なところやギリギリのところでの正確な判断が必要なところなどバイオリンを作る上での共通点も多々あります。
意外に思われるかもしれませんが、職人の方達でモータースポーツが好きな方は結構多くて私の師匠の岩井さんも出会った時から今でもずっとバイクに乗っておられます。
腕一本が命の職人仕事に就いていて最もリスキーな趣味であることは重々承知していますが、私にとってより良いバイオリンを作るためには必要な要素のひとつです。

サーキットで走った次の日は全身筋肉痛でガタガタになります。サーキットで走った次の日は全身筋肉痛でガタガタになります。

2輪レースの最高峰「モトGP」では現在、イタリア人ライダーのバレンティーノ・ロッシが圧倒的な強さを誇っていて史上最強のチャンピオンの名を欲しいままにしています。
偶然にも私は彼と年齢が同じで、自分の中で彼が現役で第一線で走っている間は自分も走ろうと決めています。
自分の限界の領域に到達するためには必然的に無駄なものを排除しなければならず、結果として純度の高いものだけが残ります。
それはバイオリン製作も同じで、元来怠け性の自分にもっとストイックさを身につけるためにも大いに役立っています。

鈴鹿サーキットピットロードにて。ホームストレートでは時速250キロに達します。鈴鹿サーキットピットロードにて。ホームストレートでは時速250キロに達します。

じつは最近よく一緒にサーキットに走りにいっているお客さんの大学生の子達とパートナーを組んで、来年の鈴鹿4時間耐久レースに出場する予定をしています。
自分の店の名前をいれたバイクで走るので、店の宣伝にもなって一石二鳥です。
もちろんレースを見てバイオリンを買いに来る人はいないでしょうが、今までにバイオリン屋のスポンサードのバイクがレースに出る(しかもそこの職人がライダー)なんて前代未聞ですので話しのネタ的にこれ以上ないだろうと関西人の血が騒ぎまくっております。

モータースポーツが好きな方がおられたら是非来年の鈴鹿4耐に応援に来てください!

次回は7月5日更新予定です。