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展示会のシーズンが終わって

第60回 篠崎 渡(2013.11.20)

展示会やイベントは過ごしやすい季節である春や秋に多く開催されるのではなかと思いますが、そろそろそうした週末の慌ただしさが一段落してほっと一息ついておられる方も多い頃ではないかと思います。弦楽器業界も多分に漏れず専門店さんのセールや楽器見本市などが展開されていまして、国内では日本弦楽器製作者協会の主催する「弦楽器フェア」などが大きなイベントで関係した弦楽器職人たちも日常に戻っている頃であります。

上海/国際楽器見本市Music China 世界中の楽器サプライヤーやバイヤーがやってくる上海/国際楽器見本市Music China 世界中の楽器サプライヤーやバイヤーがやってくる

そんな私も9月からは外出してイベントに参加したり、企画したり、また海外の見本市にも足を運んできました。今年は10月に福岡でアクロス楽器ふぇすた、上海でMusic China楽器見本市、11月は東京で工房の展示会と大阪でサウンドメッセ(ギターの展示会)といった具合です。この2ヶ月はイベントのための準備などで工房のワークベンチに向う時間が少なくなるのですが、外に出ていろいろな刺激を受けるのも仕事のうちだと思って取り組んでいます。

福岡/アクロス楽器ふぇすた 日本人製作家の楽器コーナーで作品を見て頂きました。福岡/アクロス楽器ふぇすた 日本人製作家の楽器コーナーで作品を見て頂きました。

楽器製作を始めた頃のこと、ある方から弦楽器職人とは工房に籠って楽器と向かい合い日々研鑽を積むものだ、というような訓辞を頂いたのですがいざ自身で工房を構えて仕事をはじめてみるとそれは半分当たっていて半分違っているように思えてきました。確かに工房で集中して技術を磨くことは大切なことなのですが、何のために、どのように仕事をこなさなくては行けないのかということは自分だけの狭い空間で活動していたら見失ってしまうように思えるからです。

東京/ピッチノッティ氏との展示会 楽器の展示の他、楽器用材木の販売を行いました東京/ピッチノッティ氏との展示会 楽器の展示の他、楽器用材木の販売を行いました

ニッチな産業と言われる弦楽器業界でも新しいトレンドやお客さんのニーズは常に変化していて業界の話題やお客さんの声に積極的に耳を傾けることはとても重要です。たまの機会に外出して同業の友人やビジネスパートナーと再会しいっしょに食事をしたり、新しいお客さんとの出会いを探しにいくのはこれからどのように仕事を「創って」行くかのヒントになります。またかつて、これで完璧、と思っていた技術やマニュアルが時を経ると必ずしもそうでなくなっているということもあります。

大阪/サウンドメッセ ギター用材木の販売を中心に出展しました。大阪/サウンドメッセ ギター用材木の販売を中心に出展しました。

私事ながら、今月で40歳という節目の歳を迎えました。ついつい目先(手先?)の仕事に捕われがちではありますが広い視野を持って次のステップに進んでいければと思っています。

次回は12月5日更新予定です。