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楽弓講習会・台湾について

第177回 三枝 佳世 (2019.4.20)

今回は昨年7月末に台湾で行われた弓の講習会についてお話したいとおもいます。
今回の講習会はアメリカの弓製作家Yung Chin氏が台湾の大学で弓について初歩的な点から歴史、技術的な事柄を含め3日間にわたって行われました。
Yung Chin氏はニューヨーク マンハッタンにお店を構え、数多くの弓を見てきた経験から技術、知識は素晴らしい専門家です。2011年にはロシアの製作家
Nikolai Kittleについての本を共著で出版しています。

講習会の案内パネル講習会の案内パネル

今回の講習会は台北市中心部から少し離れた故宮博物館からほど近い東呉大学(SoachowUniversity)のミュージックデパートメントの主催で行われました。この大学の教授はかつてニューヨークで音楽を学んだ方々でChin氏とは30年以上のお付き合いだそうです。そんなご縁で今回の講習会が実現しました。弓についての講習会は製作のワークショップを含めてもとても珍しく、特に今回は対象が弓の専門家だけでなく、出席者は台湾の学生、プロのプレイヤー、楽器商等で年齢も様々でした。

東呉大学の正門東呉大学の正門

大きく分けて以下の内容が文献からの資料、写真を用いて説明されました。
・弓製作について~歴史、生産国、製作体制、使用する材料、各弓パーツの説明
・歴史的弓製作家について~フランス、ドイツの製作家の説明と特徴
・弓の歴史~スタイルの変化、演奏環境、製作家とプレイヤーとの関係、使用材料の変化
・弦楽器の歴史について
・ペルナンブーコについて~歴史、生態、生息地域、問題点

製作家についての話では沢山の写真を用いてそれぞれの製作家の特徴、クセなども説明され、とても興味深い内容でした。
日々の作業のなかで分かっていると思う点も改めて深く、さらに理解することができた点が沢山ありました。
最後にはChin氏が出席者が持参した弓の問題点を聞き、そりを調整し問題をどう改善するか、というデモンストレーションも行われました。実際にアルコールランプで弓を熱し、そりを直しプレイヤーが試し弾き…という作業を繰り返し調整していきました。これは経験と技術が必要な作業だと改めて痛感しました。

アルコールランプを用いて反りを調整するChin氏アルコールランプを用いて反りを調整するChin氏

弓はとても単純なつくりであるが故、ほんの小さな変化でも音、操作性の両方に大きく影響してしまう為、様々な弓を見て経験、技術を身に付けることがとても大切だと改めて感じました。

今回のように弓について時間をかけ様々な角度から話をする、という機会は少ないと思います。学ぶとこが多々あり、とても貴重な講習会だったと思います。
また、更に弓の面白さに気づかされた3日間でもありました。