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第258回 中西 桂仁 (2022.12.5)

私の楽器はいわゆる「新作仕上げ」というものではなく「アンティークフィニッシュ」という、平たく言えば見かけを古っぽく見せるような仕上げを好んで施していますが、今でこそそんな楽器もよく目にするようになってきてはいるものの、協会発足当時10年以上前は展示会で並ぶ楽器の中でも浮いた存在であった事は否めません。関西には「さら」という言い方がありますが、そもそも新しく作られたはずの楽器を、何故古く見せるためにわざわざ加工する必要があるのか?と聞かれる事もしばしばでした。コラムを書くにあたって、あらためて「何故そうするのか」という事について考えてみましたが、

製作する本人にとっても魅力的で、自分でも「欲しい!」と思えるような楽器を作り、気に入ってくださったプレイヤーに買っていただく。

というごく当たり前の事くらいしか浮かびませんでした。
(勿論プレイアビリティについてはそれぞれの弾き手に合わせて調整しますが)
傷ひとつ無いピカピカで美しい楽器もまた素晴らしいものですし、それを欲しいと思われる方もたくさんいらっしゃるでしょう。そこは人それぞれの好みで良いと思います。
見た目から選ぶ人、弾いた時の音で選ぶ人、聞いている時の音で選ぶ人、製作者を見て選ぶ人。ひとりひとりがそれぞれの基準で、自分の好きな楽器を選んで良いと思います。製作者も同じように、それぞれの良い思う楽器を、あるいはより良いと思える楽器になるように、日々製作に励んでいると思います。
近年は家庭の事情や新型コロナの事もあったりでなかなか展示会に出展できていませんが、また関西方面の皆様にお会いできる時を楽しみにしています。