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150年前、ストラディバリウスはいくらだったのか?

第239回 やち 陽子(2022.1.5)
やち 陽子

 

 

あけましておめでとうございます。さて今回のコラムは江戸末期、ペリーが来航して日本が開国をした1854年、その4年後の手紙についてです。書いたのはジャン=ヴァティスト・ヴィヨーム (1798年-1875年)。彼はフランスのパリで活躍した弦楽器製作者、発明家、そしてディーラーとして商才にも長けており、当時弦楽器界でもっとも成功していた人物です。なにわの商人もびっくりな!?その手紙の内容を少しご紹介します。

 

1858年12月12日 パリ 私は自分が作ったヴァイオリンは300フラン、チェロは600フラン(どちらもケース、弓は別売り)で販売しています。もしオールドのイタリアンをご希望でしたらストラディバリウスなどいかがでしょうか?価格は楽器のコンディションによってかなり左右されますが、ヴァイオリンで2000フランから8000フラン、チェロで3000フランから12000フランです。お客様のご予算に合わせてぜひオールド楽器もご検討ください。

当時の新作楽器とイタリアンオールドの価格差はたったの10倍という事実にまず驚きました。ここからは推定計算になりますが、まず150年前のフランを現在の日本円にするといくらになるか?を試みました。換算は世の中の仕組みや人々の暮らしが違い大変難しく当時の物価や賃金から想像しなければならないのですが、労働賃金を基準として計算しました。

ある資料によると1856年のフランス公務員の年収が1350フラン、日本の国家公務員の令和3年の平均年収が682万円とすると1フラン=約5051円となり、ここでは計算の便宜上5000円とします。
そうするとヴィヨームのヴァイオリンは300フラン@5000円=150万円、チェロは300万円となり新作楽器の値段としてはおおむね納得のいく値段になります。

さてさて、この換算を元に計算すると憧れのストラディバリウスのバイオリンが150年前いくらだったかというと約1000万円~4000万円、チェロは1500万円~6000万円となりました。今や最高落札価格12億円!!庶民には夢のまた夢ですが150年前だったら。。。と初夢で見て下さい。

ちなみにヴィヨームはこの手紙の3年前にイタリア人楽器商ルイジ・タリシオの相続人からイタリアの名工達による約150挺の楽器を8万フランで購入しており、この中には一度も弾かれていない≪メシア≫と他24挺のストラディバリウスが含まれていました。恐らく彼が当時のストラディバリウスの市場価格を握っていたことになると思われますし、一番最初に信用の置ける鑑定書を書いた人物であるということも書き添えておきます。

 

とても美しいヴィヨームのサイン

 

こちらのヴィヨームの手紙はアメリカ人の顧客と1858年-1925年に渡る11通の書簡のやり取りのほんの一部です、彼のビジネスやその成功の秘密。
そして弦楽器への考えなど多岐にわたる歴史的発見が手紙の内容に書かれてありました。これは弦楽器業界の世界遺産かも!?まだまだお付き合いいただける方はブログに掲載しますのでそちらをご覧ください。

ブログ「クレモナ カルテット」はこちら
https://blog.goo.ne.jp/cremonaquartetto