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第五回関西弦楽器製作者協会展示会を終えて

第47回 岩井 孝夫(2013.05.05)

今年で第5回になる大阪市中央公会堂での関西弦楽器製作者協会の展示会を無事終了致しました。多くのご来場の皆様ありがとうございました。
今後少しづつではありますが、アンケートに記入していただいたご意見やご感想などを参考に、より良い展示会を目指していこうと思っております。

5年前を思い起こせば、ヨーロッパ風の荘厳な広々とした展示会場で出展人数も出展楽器も今よりはずっと少なかったので会場がとても広く感じられました。
その会場が美しく大きいだけに、時間帯によっては来場者が少なくなると冬の浜辺のように荒涼とした感がありました。そのときの皆の思いは楽器試奏に1人でも多くの人が来てほしい、このドーム型の天井空間に楽器の音が響き渡ればどんなに嬉しいことかと思ったものでした。
この美しい会場-大阪市中央公会堂特別室とイタリア・クレモナ市役所のストラディバリやグアルネリが展示してある部屋は大変よく似ていて、そこでバイオリンを弾くとどちらも大きく音が響く構造になっているのです。

あれから5年が経ち、状況は少しづつ変わりました。当協会の会員数も増え、来場者も増し、今年にいたってはこの会場ではどう考えても狭すぎると皆が考えるようになりました。
数十本を越える楽器がここで一斉に試奏され続けると、隣の人と話をするにも声が聞き取りにくくなるほどです。まるで地下鉄のホームで電車が通過するのが延々と続く状態になるのです。
これではせっかくの楽器展示試奏会の意味も半減してしまいます。楽器を弾けども自分の音が聞き取れないカオス状態になってしまいます。
ある意味5年前の夢が完全に叶った状態になってしまいました。
次回はもっと大きな会場でより良い環境の音楽試奏空間を作ることが新たな課題となりました。

今回のミニコンサートはバイオリン馬渕清香さん、ギター岩崎慎一さんに出演いただきました。大阪市中央公会堂は大きな建築物で私達が利用している隣の部屋は大きなシャンデリアが天井から吊り下げられ、100人が一斉に社交ダンスをしても何も問題のない部屋の大きさです。今回私達が使用した部屋の4倍の大きさです。

ここ大阪には社交ダンス愛好者が想像以上に多くいて、年間を通じて土曜日曜にはこの大きなホールのシャンデリアの下で数多くある社交ダンス団体が、毎週利用していいます。私達の展示会も毎年土日を利用するので、この5回ともどこかのダンス団体と隣同士の部屋の利用が重なり合いました。毎年、私達の部屋でミニコンサートが始まろうと静かな状態になると隣から大音量のタンゴやジルバが鳴り響いたり、ある年は生バンドと管楽器と大太鼓の入った演奏までありました。一体ここはどこの国なのかと思う年もありました。

今年のバイオリニストの馬渕さんは2回目の出演依頼なので、それらの状況、隣の部屋から流れてくる音は予期されていたようで、その瞬間が来ると負けてなるものかとよりいっそうの集中力で熱演、また来場者も同じように集中力を高めて聞き入るというどちらにも妙な一体感が生まれ、この劣悪な状況の中でこれだけの名演奏をよくやってくれたと二人に大きな拍手が鳴り響いたコンサートでした。

今回からは5回のミニコンサートに5本の展示バイオリンを使用する形態をとって各楽器いろいろな音の違いも感じ取れました。また演奏終了後、その楽器を製作した本人のインタビューも行ないました。
来年からはミニコンサートのほかにも出展楽器を使って音をテーマに新しい展開を始めます。美しい音、良い音とはどんなものなのか、私達人間はどのように音を感じ取っているのか、を具体的に体感できる音のイベントを考えています。
弦楽器を使っての新たな企画を発信していきます。

最後にこの場を借りて、後援者の大阪日伊協会、イタリア文化会館―大阪、公益財団法人日本イタリア会館に御礼申し上げます。

関西弦楽器製作者協会 会長 岩井孝夫

次回は5月20日更新予定です。