ウェルカム!
第77回 西村 祐司(2014.08.05)
バイオリン職人という職業をしているせいか、日常生活の様々な場面で弦楽器が使われていることに気がつきます。街中やテレビ、ラジオでもバイオリンの音色を聞きますし、特に書店や病院などで耳にする音楽は弦の音楽であることが多いです。
最近の出来事ですが、友人の結婚披露宴がありまして、新郎とはオーケストラを通じて知り合った中学生からの友達ということで出席しました。ありがたいことに彼のバイオリンは私の製作したものです。
披露宴の受付にはウェルカムボードが飾られるのですが、数ヶ月前に製作を依頼されました。
そう、バイオリンのウェルカムボードです。文字は手で書くべきか、テンプレートを作ってスプレー書きすべきか、いろいろ考えましたが、心を込めて彫ることにしました。板だけではさびしいので飾り付けして額に入れました。自分で見ると気恥ずかしいのですが、新郎新婦にも喜んで頂けたようでホッとしています。
披露宴では、新郎と、中学高校オーケストラ部でともに演奏した仲間とで弦楽合奏をし、幸せな時間を共有することができました。
披露宴の後のパーティでは新郎から新婦へのバイオリン演奏というサプライズもありました。大袈裟な言い方かもしれませんが、自分の作った楽器が一人の大切なひとのために演奏され、そして、それを出席者全員で見守るという空間を創造したことを考えると、職人として少しでも社会に貢献できたように感じます。
バイオリン職人としての幸せも感じられるひとときでした。
次回は8月20日更新予定です。