真夏のはぎ合わせ作業
みなさま、残暑お見舞い申し上げます。
暑いですね~。日本も猛暑のようですが、今年はクレモナも例年にないほどの猛暑です。7月中旬は、イタリア国内で2番目に暑い都市がクレモナだったようで、40度目前まで温度が上がりました。すでに夏バテ状態の私ですが、夏休み・土日もなしで毎日仕事しております。
にかわ
というわけで、今回は温度の話です。楽器製作にとって、寒い季節で一番支障が出るのが「膠(にかわ)」での接着作業です。膠は古来から使われている天然の接着剤で、ヴァイオリンを修理しながら何百年も使い続けられるのも、この昔ながらの膠のおかげなのです。
湯煎で溶かしたにかわ
この膠、牛や羊の皮や骨から抽出された動物性たんぱく質です。膠は沸騰しない温度で水に溶かして、温かい状態で接着します。しかし接着時の問題は、接着される木材や室内の温度です。接着する木材や室内環境の温度が低いと、膠液はすぐにゼリー状になってしまい、うまく接着できません。この膠、要はゼリーや煮こごりと同じゼラチン質なのです。
大体ですが、室内温度が20℃以下の場合は接着するには寒すぎるので、アルコールランプやドライヤーで接着部分を温めてから接着するか、または室内温度を上げて20℃以上になるようにしてから接着作業しています。できれば気温が25℃以上あれば理想的だと思います。
はぎ合わせ作業中
小さな接着範囲や薄い材料の場合、温めるのも簡単ですが、はぎ合わせ(楽器の表裏板の左右を接着する作業)のような接着範囲が大きく分厚い材料の場合は温めるのも大変です。その場合は室温を上げる必要がありますが、寒い冬の期間では、膠接着のためだけに必要以上に暖房しないといけません。
接着後の締め付け作業
山のようになったカンナ屑
はぎ合わせが終わった表・裏板
その上、私と菊田さんの共同工房は意外と広くて天井も高いので部屋を暖めるにも時間がかかるし光熱費もかかり大変です。そのため私は夏の暖かい期間を利用して、まとめてはぎ合わせの作業をしております。
カンナの刃を最高にまで研ぎ上げ、丸5日間で、表板・裏板合わせて20枚ほどをはぎ合わせしていきます。写真は昨年の作業の様子。接着後はすぐに締め付けをして一晩乾燥させます。
5日後には薄いカンナ屑の山ができます。
そして接着し終わった表板・裏板がたくさん。これで冬のはぎ合わせに悩まされることなく作業できます!
・・・しかし今年は暑すぎて、カンナがけの作業はきついので、今年の分の作業はまだできておりません。25℃を超えると、「暑がり」である私にとっては頭の機能が低下してしまうのが問題かも・・・。
どこか、年中20~25℃で一定の気温の場所があれば、私の工房に最適なのですが・・・!
次回は9月5日更新予定です。