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イタリアの花粉症

第37回 百瀬 裕明(2012.08.05)

7年前の9月、私がイタリアに来たとき春になるまでは花粉症のことはすっかり忘れていたものです。ところが、渡伊翌年2月、急に鼻がむずむずしだし、花粉症のことをすっかり忘れていた自分はいったいなんだこれはと思いましたが、それはまぎれもなく花粉症でした。

全く忘れていたわけではないのですが、日本は戦後の植林によって杉が非常に多くなり且つ花粉を付ける最盛期を迎えていることから花粉症が酷いんであって、イタリアに行けばなくなるだろうとたかをくくっていました。

ところが実際は全くの逆でした。なんとイタリアでは花粉症の時期が日本よりも長く、症状も酷いのです。(注:人によるのかもしれません)。私は日本では杉と檜の花粉症だったので、大体長くても3月から5月のはじめまでで終わったものです。これでも十分長いのですが・・。それが、イタリアではひどいときは2月くらいに始まり終わるのは夏ごろ。実はこのコラムを書いている夏にやっと終わるくらいなのです(現在クレモナは毎日30度を超えています)。

写真だとわかりづらいのですが、辺り一面に飛んでいます。写真だとわかりづらいのですが、辺り一面に飛んでいます。

一度医者に行ってどの花粉のアレルギーかテストしてもらえと勧められたこともありますが、クレモナでの医者にはいい思い出が全くありませんので未だに行っていません。恐らくcipresso(糸杉)系の花粉なのではと友人のイタリア人がいっていました。

拡大するとこんな感じです。雪のような白いものがPioppoの綿毛です。拡大するとこんな感じです。雪のような白いものがPioppoの綿毛です。

あとはなんといってもpioppo(ポプラ)。これは目に見えて目と鼻にきます。4月ごろから飛び始めるのですが、最盛期はこんな感じです。町中Pioppoの綿だらけ。我が家の建物の外玄関の金属製の格子扉に網が貼られてたのですが、Pioppoの綿毛がこびりついてあまりに汚いので大家が撤去してしまいました。
とにかくそれくらい酷いのです。

更に、イタリアにいて花粉症の人にとって辛いのは外でマスクができないことです。いいえマスクはできます。しかしするとほぼ間違いなく変な目で見られます。私の場合は髭+マスクというコンビネーションで一層まずいようです。
私が来た当初はそれを知らずつけて学校に行っていたのですが、同級生からも先生からもからかわれつづけたものです。それでも学校の中のことなのでまだいいかなと思っていました。しかしある日、買い物に出かけて店に入ったときにイタリア人の親子連れがおり、子供が私を指さして、「あの人お医者さんなの?」と母親に話しかけていました。それに対して、母親が「違うのよ、見ちゃいけません」みたいなことをいってるのを聞いて以来マスクはしなくなりました。

それからは、日本で処方してもらった抗アレルギー剤を飲み、点鼻薬、目薬をさし、あとは花粉に無防備にさらされてジッと我慢の修行のような日々です。特に窓を開けないわけにもいかない夏近くが一番つらい時期です。
もちろんイタリア人にも花粉症の人はいます。どうやら薬で抑えているようですが、基本的にこちらの薬はどれも日本人には強いと聞くので今のところまだ日本の薬で頑張っています。

クレモナは材料や道具それに多くのすばらしいマエストロの方々等弦楽器をつくるには良い所ですが、季節的な環境としては・・・・?。
冬は寒く、加えて湿気でカビだらけ。やっと冬がおわったと思ったら長い花粉症の季節、そして37度にも達する夏の季節に冷房無しの我が部屋。本当に過ごしやすいのは秋くらいでしょうか。

ストラディバリが何故クレモナで楽器を作ったのか。そのような話をしてくれたマエストロがいました。なんてことはありません。クレモナで生まれたからです。
イタリアに来る予定のある方で花粉症の方はマスクをして奇異な目で見られることに耐えるか、それとも花粉の洗礼を甘んじて受けるかの2つに一つをお選びになる覚悟が必要かもしれません。

次回は9月5日更新予定です。