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クレモナ・モンドムージカのシーズンでした!

第17回 永石 ‎勇人(2011.10.05)

イタリアクレモナで年に一度のbigイベント、モンドムージカ。名立たるクレモナのマエストロはもちろん、海外からも職人、ディーラー、大小メーカーなど多くのブースが立ち並ぶ楽器市です。なんといっても見所は、イタリアのフェアらしくそろぞれのブースがそれぞれに創意工夫し来る者を楽しませてくれるところではないでしょうか。多くの楽器プレーヤーでない方も、家族連れでもぐるっとまわってお土産をみつけられるようなところです。

モンドムージカ会場にて。昔、共に働いた製作家モンドムージカ会場にて。昔、共に働いた製作家

さて実際はと申しますと、今回も自分の楽器はなかったので自由に歩き回っていました。もちろんお目当ては木材のはずでしたが・・10歩あるけば知人に出会う社交の場?いまとなっては各国に散った旧友とはワインを片手に立ち話。もちろんダイレクトな情報交換も盛りだくさんです。とは言いつつ、会いたかったフランスの娘も、父親になった瘋癲(ふうてん)のドイツの彼も今年は会えませんでした。と、今年の来場者は若干少なく感じましたね。
そのほか学生時代にお世話になった師匠もブースを持っていたので挨拶に、今年はストラディヴァリの装飾チェロを復刻し展示していました。今年のイベントとしてストラディヴァリの装飾楽器の展示が市内ミュージアムでありましたので同時に装飾楽器の製作ビデオをこの新作楽器で制作したそうです。

ストラディウ゛ァリ1709年”Greffuhle”を目の前にストラディウ゛ァリ1709年”Greffuhle”を目の前に

その後も317あるブースを3日間でグルグルとめぐり、他の製作家とのお話、工具の調達、ブランド駒の購入等など、通りがかりに今年話題の十本近くあったグァダニーニに目を向けるようなとても充実したモンドムージカでした。
肝心の材は?といわれますと、表板は今イタリアの最高級材とされるものを迷わず購入し、裏板(楓)はオーストリアの材木屋さんがみごとな木を何本か切ってきたので束でお願いいたしました。この木を使うのは何年後になることやら・・・

そしてもう一つ、ストラディヴァリ財団がこの時期に毎年贈るヴィルトゥーゾ賞にヴァイオリンの林悠介さんを選ばれ、そのコンサートが催されました。ウィーン在住の悠介さんは2010年のブレーシャのヴァイオリンコンクールで優勝され今後目のはなせないミュージシャンです。
さて、ソロ・コンサートのプログラムは:バルトークのヴァイオリン・ソナタ、イザイのソナタ5番、バッハのパルティータの2番と濃厚で緊張感のあるプログラム。バルトーク、イザイは超絶技巧の連続でヴィルトォーゾとしての力を十二分に聴かせていただきました。プログラム最後のバッハになって会場の緊張がほどかれた後、最後のシャコンヌのアルペジオが夜のミュージアムに響きわたり聴くものをその世界にいざないました。
そしてアンコールにはイタリアではなくてはならないパガニーニ。カプリース17番をサラッと弾きこなし、自分はおなかいっぱいで帰宅することができました。

林悠介さん、グァルネリをチューニング林悠介さん、グァルネリをチューニング

さらに翌日、イベント主催者のご好意でミュージアムに期間展示されている名器を林さんが試奏されました。楽器はストラド2本、グァルネリ・デル・ジェズ、アンドレア・グァルネリ。お気に入りはストラディウ゛ァリの1720年の“bavarian”。楽器が体にあっている、近い将来こういう楽器でのコンサートをしていけるようになりたいと言っていました。

と、こんな密に詰まった三日間、友人と久々にゆっくり夕食を楽しみ、学生時代を懐古いたしました。

次回は10月20日更新予定です。