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バイオリンワークショップ

第130回 鈴木 徹(2016.11.05)

こんにちは、クレモナのコントラバスメーカーの鈴木徹です。
僕はベースや弓を作ったりしているんだけど、どうしてクレモナの楽器は売れるのになんで日本の製作者の楽器は売れないのか?演奏家に使ってもらえないのか?ということを前から考えていました。

バイオリンのデザインを教わったフランソワ・ドゥニバイオリンのデザインを教わったフランソワ・ドゥニ

今クレモナにはベテランの製作者もいるけど、外国人の製作者や修復家、学生もたくさんしていて、いい楽器を作ろう、ストラディヴァリみたいなすごい楽器の修復をしてみたい、っていう人がたくさんいる。だからアメリカやイギリスで経験のある人を呼んできて講義やレクチャーが開催されていたりしてとても刺激的でそういう人たちと直接話したり技術を見せてもらったりする機会がたくさんある。世界のトップの製作家や修復家は次々に色んなことを考えていてそういうのを見たり聞いたりできるのはクレモナのいいところだと思っている。

でも日本にはそういう機会はほとんどなかった。クレモナから日本に帰ってきた楽器製作の友だちも、あったらいいな、っていうことを言っていたのだけどぼくだけではどうしたらいいかわからなかった。
そしたら、僕と同じようなことを考えている仲間が見つかって、じゃあ日本でワークショップをやろう、ということになった。それが鳥取でやることになった「みささバイオリンワークショップ」。

弦楽器技術者の心得とスーパーハイテクな修復技術を見せてくれたジェリー・パセヴィッチ弦楽器技術者の心得とスーパーハイテクな修復技術を見せてくれたジェリー・パセヴィッチ

なんで鳥取かっていうと、発起人のひとりでこの関西弦楽器製作者協会のメンバーの岡野さんが校長をしている鳥取ヴァイオリン製作学校を会場に使えるし、海外のワークショップやマスタークラスは田舎の自然豊かな環境でやっていることが多いから都会でやるよりも環境がいいんじゃないか、ってことで決まった。

最初のワークショプは去年フランスからフランソワ・ドゥニとアメリカからジェリー・パセヴィッチっていう人を呼んでバイオリンのデザインをやってみたりすごい修復のテクニックを見せてもらった。
計画するときは人が集まるかなとかうまくいくかなとか不安だったけどやってみたら参加費高いにもかかわらず参加者もすぐ集まって終わった後みんなの満足度は高かった。ということで今年はイギリスからピーター・ベアっていうすごい人を呼んで第2回目を開催できた。

ピーター・ベア氏を招いた今年のワークショップピーター・ベア氏を招いた今年のワークショップ

僕らバイオリン作りの関係者でこの話を聞いた人は、イギリスから鳥取にベアがやってくるの?ってだれもが思ったと思う。ほんとは始まる前まで実行委員の僕も思っていた。これってすごいんじゃないか、って。
実際やってみたら色々な人とのつながりができたし、僕たちのワークショップはいい流れをつくるきっかけになったんじゃないかって思った。みささバイオリンワークショップはまた来年も計画している。僕の夢は、ベースを作って世界を平和にする、ってことんなだけどみんなでいい楽器を作ってみんなが幸せになったらもっといいと今は思っている。

最後に、
ワークショップで訪れた倉吉市や三朝町は10月に起こった地震で大きな被害をうけてしまった。度々行くことになったところが被害を受けた話を聞いたり様子を見るととても胸が痛む。被災した方々にお見舞い申し上げるとともに一日も早く落ち着いた生活に戻れることをこころよりお祈り申し上げます。

 

次回は11月20日更新予定です。