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モラッシーさんを偲ぶ

第155回 藤井 勉(2018.03.20)
藤井 勉

この冬は、例年よりも寒い日が多く、各地で色々被害が出たようですが、ようやく春の兆しが感じられてきた2月27日にモラッシーさんが亡くなられたとの事です。弦楽器をされている皆さんは、現代のクレモナには、ビソロッティ派とモラッシー派が在るのをご存知だと思いますが、そのモラッシーさんです。私は、クレモナで修行した事も、住んだ事も無いので、クレモナで勉強された人からはお叱りを受けるかも知れませんが、ビソロッティ派は、とても美しい仕上げで、パーフリング(縁の黒い二重線)部の窪みはとても浅く、赤系の色が多い。モラッシー派は、手作り感があって、ヴァイオリンらしいアーチでゴールデンブラウン系の色が多い。極端な分け方になりますが、ビソロッティ派は磁器、モラッシー派は陶器と云う印象です。

私は、モラッシーさんとの接点はほとんど無いのですが、30年ほど前(1990年頃)でしょうか、大阪で講義をされて、その時の印象に残っている事をお話しします。順番が前後しますが、最後の質問コーナーで、右利きと左利きでは、どちらが良いか?。の回答で、「両方使えるのが良い。」。時間を掛けて作るのと、速く作るのではどちらが良いか?。には、「速く作れる人は、ゆっくりも出来るが、ゆっくりの人は、速くは出来ない。」。との事でしたので、私は製作で荒削りの工程では、両手に小さな鉋を持って、速く削ったり、左手でも削ったりしています。細かい部分や、仕上げでは、利き手の作業になりますので、まだまだです。

肝心の講義の内容は、ほとんど覚えて無いのですが、モラッシーさんが、材料の木を伐りに行くのは、(表板材は山へ伐りに行くそうです)晩秋の新月の日だそうで、そんな真っ暗な中で伐るのかと聞いてみたら、「新月とは云っても日中に伐ります。」との事で、ごもっともでした…。木を伐る時期ですが、宮大工さんが書いた本でも晩秋に伐るとありました。木が成長を止めている時期で都合が良いそうです。春などに伐ると、暫くは成長するので、安定するまでに時間が掛るようです。その木を川に流して時間を掛けて運ぶ事で、養分が抜けて更に都合が良いと書いてありました。

最後に、今回の講義からずっと後の事ですが、飛行機が全面的に禁煙になってからの話しです。たばこ好きのモラッシーさんは、禁煙でのフライトは、「チェロを作るよりしんどい。」と製作者らしい表現でした。

モラッシーさんのご冥福をお祈りいたします。

 

次回、関西弦楽器製作者協会展示会は2018年4月22日(日)です