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タリシオ

第133回 杉本 有三(2016.12.20)
杉本 有三

W.A.シルバーマン著の「バイオリンハンター」を紹介します。主人公は1792年イタリア ミラノ生まれのルイジ・タリシオ。 あらすじは…

ストラディバリウスが死んだ1737年、末の息子パオロはまだ子供。彼が成人した時に父の遺産である12本の楽器と木型や道具類を安値で売りさばいてしまった。その中にはあの傑作メシアもあった。年月が経ち ストラディバリウスの孫娘シスターフランチェスカは尼僧となり、教会の感謝祭で出逢った大工職人ルイジ・タリシオにイタリア全土に散らばった祖父アントニオの楽器を捜し出し人類に返還したい意思を伝えた。

やがてタリシオは国内の教会や修道院、貴族の館を行脚しながらクレモナ楽器の回収に努める人生を歩む事となる。道中、大工仕事で日銭を稼ぎながら ある農夫の家を修理中に納屋から偶然素晴らしいアマティを見つけたり、カルロベルゴンツィ2世の自宅を訪ね、父カルロ1世を含めストラディバリウスなど21本のクレモナ楽器を いとも簡単に譲り受けたりもした。ある修道院では倉庫に眠っていたアマティ、グワルネリなどの名器をタリシオ持参の新品楽器と物々交換で手に入れもした。 僧侶達には使い古した楽器より健康な楽器1台あれば満足なのである。

のちタリシオはフローレンスのサラブーエ伯爵邸を訪問し 氏が前から欲しがっていたストラディバリウスがアマティの元で奉公していた最後の時代のアマティラベルの作品を差出し、感動した氏は喜んでメシアと交換した。また、タリシオは表板以外 行方不明のストラディバリウスのチェロをスペインでネックと胴体を見つけ完全復元にも貢献している。 やがてこれら数々の楽器をフランスの楽器商ヴィォームに持込み2人は巨万の富を得る事となる。

1854年62歳となったタリシオは1人自室の椅子でベルゴンツィを抱えた状態で永眠。病名は肺血腫。タリシオ死後 ヴィォームは彼の家を訪ね 兄の残した遺品になんの価値観も持たない妹夫婦から この後、世界中に姿を現わすであろう246本のクレモナ名器を破格の安価で買い取ったのである。もちろんその中にはメシアもあった。

以上、昭和53年発行「失われたバイオリンの名器を求めて」からの抜粋でした。

次回は1月5日更新予定です。

次回、関西弦楽器製作者協会展示会は2018年4月22日(日)です