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イタリア中部地震

第126回 百瀬 裕明(2016.09.05)
百瀬 裕明

先月24日未明、イタリア中部をマグニチュード6.2の地震が襲った。震源が浅かったこともあり建物の被害は甚大で、いくつかの町はほぼ壊滅状態になった。もちろん地震そのものによる被害なのだが、今回の地震の場合人災の側面もあったと言われている。

イタリアの建物は古いものが多く、それを補修して今まで使ってきている。だからこそ古く趣のある街並みが見れるわけだが、古い建物の多くは煉瓦造りで大きな地震がくると簡単に崩れてしまう。数年前にパルマやその近辺で地震が起きた時、クレモナも揺れたが震度ではいえば、2程度だったと言われている。当時私は建物の最上階(4階)に住んでいたのだが、棚の上に置いておいた段ボールなどが落ち、揺れもひどく体感的には震度4以上に感じ、建物が崩れるかもしれないと思ったほどだ。別に免震構造の建物のようにわざと揺らせて免振しているわけではないので恐怖である。

2009年のラクイラの地震の際も今回と同じように町は壊滅状態になり、その後対策として新しく作る建物に関しては耐震構造を持たせることが義務付けられた。しかしこれがあまり機能していない。例えば今回壊滅状態になった町アマトリーチェで耐震対策を施して建てられたという学校も実際には強度不十分の材料が使われており、今回の地震で倒壊した。現在捜査が行われている。
日本はコネ社会と言われるが、イタリアは日本に輪をかけたコネ社会である。コネがないと資格をとっても仕事はほぼ見つからないし、コネがあると進む手続が、なければできないという話も数多くある。先に述べた耐震対策が進まなかったのはこうしたコネ社会の悪い部分が出たところもあるのだろう。また、古い建物に関しては耐震対策をしなければならない強制力もないようだ。

ただ、もし実際に耐震対策をしようとして、例えばクレモナの町の建物を見ても、これをどうやって対策するのだろうと素人の私個人的には考えてしまう。つぎはぎだらけの何百年も昔からある建物。耐震対策といっても古い建物を壊して建て直すしかないのではないかと思えてしまう。そう考えると財政難で観光産業が盛んなイタリアにとって、古い町並みをそのまま残したいがそれらを耐震対策するにはお金がかかり過ぎるというジレンマがあるのもわかるし、現実的にはかなり厳しいのかもしれない。

しかし、イタリアはもともと日本と同じ地震国。それでもこれだけ耐震対策が進んでいないというのは日本ほど頻発に起きなかったということもあるのだろうが、どうにも不思議な話である。7年前の教訓が生かされずに亡くなられた今回のような犠牲者を出さないようにするために、今度こそは古い建物も含めしっかりとした耐震対策を継続的にしてほしいものである。
クレモナに3年ほど前に新たに開館したヴァイオリン博物館。この建物も元は古い建物を改装したものだ。中には文化的にも歴史的も貴重な多くの楽器が展示されている。きちんとした耐震対策がしかも設計通りに施されていることを祈るばかりである。

次回は9月20日更新予定です。

次回、関西弦楽器製作者協会展示会は2018年4月22日(日)です