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お寺とヴァイオリン

第115回 安富 成巳(2016.03.20)

実は私の実家は田舎のとあるお寺です。
たまに帰省した時に、お御堂でヴァイオリンを練習したりします。不思議とお御堂の雰囲気、響きなどがヴァイオリンと合っていて、練習に集中できます。特にバッハの無伴奏ソナタやヴィヴァルディのソナタなどが合っていると思います。

ヴァイオリンというと西洋の楽器の典型、日本の建築物の典型ともいえる寺社仏閣とはミスマッチするように思えます。ですが実際に楽器を出して弾いてみると非常に調和するんです。最近はお寺でのコンサートなども増えており、実際に聞きにいったりTVなどで視聴したりされた方も少なからずおられるかもしれません。
そのような方はこの「意外と合っている」が分かるのではないでしょうか?なぜなのでしょうか?

まず建物の構造という部分があるでしょう。天井が高く、スペースも広く周りに遮蔽物も少ないというだけで楽器を奏でる空間として合っています。ですが教会はともかく、お寺はコンサートホールに音響面ではかなり劣るでしょう。先ほどバッハやヴィヴァルディの曲が御御堂などで弾いていて特に合っていると感じると書きました。
このコラムを見ておられる方は、クラシック音楽を嗜んでおられる方も多いと思うので、ご存知の方も多いでしょうが、ヴィヴァルディは教会の司祭ですし、バッハも教会オルガニストとして神に捧げる音楽を多く作曲しました。

キリスト教と仏教では信仰する対象が違えど、信仰を育む建築物に入ると静かで穏やかな気持ちになるものです。そのような気持ちで演奏者側も聴衆側も望めることが、上の疑問の一つの答えなのかもしれません
今回、ヴァイオリン製作とあまり関係のないコラムになってしまいましたが、弾いていて浄土の心地を味わえるような楽器を作りたいものです

 

次回は4月5日更新予定です。