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寒い冬と暖炉

第111回 伊東ラッザリ渚(2016.01.20)
伊東ラッザリ渚

一月半ばになり、この冬も折り返し地点を過ぎたところでしょうか。しかし暖かくなる日はまだまだ遠そうで、クレモナは冷え込みが厳しい日が続いています。

イタリアの暖房はセントラルヒーティングが主流ですが、薪ストーブや一時期廃れかけていた暖炉もここ数年また人気があるようです。

私の自宅にも暖炉がついていて、寒くなる11月頃から冬の間活躍してくれます。
こちらに来るまで暖炉に火をつけたことなどなかったので、主人の家に一緒に住み始めた頃、興味津々でやらせてもらっていたら、いつのまにか火付け係に任命されていました。今では自宅に帰って一番に火をつけるのが日課です。

たかが暖炉ですが、家族それぞれ色々とこだわりがある様で、アラーレと呼ばれる薪を乗せる台座の置き方や木の積み方など、毎日暖炉の準備をする人によって微妙に違います。最近は様々な良い着火材が出ていて薪に火をつけるのもとても簡単ですが、化学物質を含む物が多く、いやな匂いと煙が出るので着火材は使いません。

そこで活躍してくれるのが製作中に出る端材です。一年分の端材を取っておいて一冬の間に消費します。
私が弦楽器製作を始めた頃、東京の師匠に製作中に出た端材は将来、修理の時に使えるかもしれないから捨てずに取っておきなさいと言われました。しかし修理のお仕事をする事がほぼ無くなった今、端材を取っておいても使う機会もなく途轍もない量になってしまうので、このような形で使っています。
火をつける時は今でもどこか心苦しいのですが、普通ゴミとして処分してしまうよりは良いかと自分に言い聞かせ、木に感謝をしながら最後に活躍してもらっています。

また、暖炉を使う時期だけのとっておきの楽しみがあります。パルミジャーノチーズの塊の残った皮の部分をじっくりと暖炉の火で炙ります。まわりはこんがり香ばしく、皮に残ったチーズは柔らかくなってとっても美味しいです。こちらは一年分取っておく事は出来ないので、チーズを食べた分しかありませんが…。

そして長い冬が終わって暖炉を付けなくなったら、一冬分の汚れを落としに煙突掃除屋さんに来てもらい、煙突に付着した煤を落としてもらいます。そこでもう一つの副産物がこの煤です。取れた煤を水やアルコールに溶かして楽器にニスを塗る前の下地材などに使用できるのです。

長く寒さの厳しい北イタリアの冬ですが、我が家の暖炉の火が暖かみとともに生活にもゆとりを与えてくれています。

次回は2月5日更新予定です。

次回、関西弦楽器製作者協会展示会は2018年4月22日(日)です