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豆かんなの製作

第91回 細野 正洋(2015.03.20)

木工ではさまざまな刃物や冶具を使いますが、思い通りの作業を確実かつ安全に行うためには自分の作業に合ったものを自作するか、市販のものを自分の使いやすいように加工するかです。ここでは好みのサイズ・形の豆かんな(指かんな)の作り方を紹介します。材料は古いかんな(台と刃)と3-4mm厚の真鍮の板です。

写真1写真1

1 できるだけ刃の薄い古いかんなを手に入れる。刃を金属切断砥石で好みのサイズに切断する(写真1)。切断面はきれいにグラインダーと砥石で仕上げる。刃の左右に厚みの差があるようならグラインダーで削って同じ寸法にする(同じでなくても良いが格好が悪いだけ)。

2 台作り 

写真2写真2

2-1:古いかんな台から、幅は刃の幅プラス4-4.5mm 、長さは幅の 2-2.3 倍ぐらい、厚さは 18-20mm ぐらいを切り出す。(写真2)

2-2:最終的に仕上げたい穴の形を側面と表面に書き、ドリルでガイド穴をあける(写真2)

2-3:描いた線にそうように彫刻刀で前後の角度が出るまで掘り込み穴を貫通させる。貫通直前は底側から穴をあけ底側の面をいためないようにする。

写真3写真3

2-4:回し引きのこぎりで、かんな刃の入る溝を、厚みを考慮して 1mm ほど切込みを入れ(写真3)、彫刻刀ややすりで、かんな刃の幅と厚みを何度も確認しながら穴を広げる。
(これが一番繊細な作業だが,ゆるくなり過ぎたら、極薄い木片を瞬間接着剤で貼り付けやすりで微調整する)

写真4写真4

2-5:底の形を仕上げるが、局面のカーブが大きい場合は底の木面が磨耗しやすいので、これを避けるため真鍮の板(3-4mm厚、幅5-7mm)を埋め込み、瞬間接着剤で固定する。
底はやすりで目的の曲面に仕上げる。(写真4中)

3 刃は、台のカーブより少し小さいRのカーブにして、削ったとき削り面に刃の角の線が出ないようにする。

4 使用法は、Fingerplane といわれる通り親指と人差し指の2本でつまむようにして持ち(握り締めない)押して使用する。指の位置を刃の上に当てていれば、かんなは削る材料の局面に自在に対応してくれる。

自分の思い通りの使い勝手の良い工具を自分で作るのも、大きな達成感につながります。何種類かの幅と曲面のかんなを使い分けると作業も楽しくはかどります。

ついでに、スクレーパー(Scraper) の作り方も紹介しておきます。(写真4下)
この工具は、西欧独特の工具で、簡単に作れ、曲面を削るのに非常に便利な工具です。

材料は、替え刃式胴付のこの使用済みの刃(0.3mm) が一番使い勝手がいいです。自分の好きなサイズと形にグラインダーで仕上げて、砥石で 80 度ぐらいの角度に刃を付け、ドライバーの軸で刃先を外に向けて軽くこすると出来上がりです。平面を削る場合は、少し厚め(0.5mm) の替え刃のほうが使いやすいと思います。
スクレーパーは、すぐに切れなくなるので頻繁に研がなければなりませんが、薄いのですぐに研ぎあがります。

 

次回は4月5日更新予定です。