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You and the night and the music

第80回 鈴木 公志(2014.09.20)

早いもので二度目のコラム更新となりました。前回の僕のコラムが2011年の7月なのでもう三年も経ったことになります。三年も経てば変化もあるもので、個人的には13年間住んだクレモナを後にして現在は横浜市でお店を開きました。といってもごく最近の事なので、正直まだクレモナ感?が抜けません。というより僕の性質がクレモナ体質になったのでしょうね。

という訳で(?)お酒の話です。

趣味は何?と人に聞かれると困りませんか?僕は結構迷います。音楽ももちろん趣味なのですが、半分仕事と関係してるので答えにくく、そこで迷った挙げ句最近では「飲酒」と答えています。
お酒に関しては大概なんでも飲みますし、場所も居酒屋さんからバー、立ち飲みとなんでも好きです。節操の無い酒飲みの様ですが実際そのとおりなので何も言えません。でも節操の無いなりに思い入れはあるのですが…
思い入れ、というかお酒を飲み続けてきた事によってお酒のひとつひとつに記憶が付随しているのかもしれません。

お店にも弓の横にお酒コーナー。ディスプレイも兼ねているので頂きものや見た目の美しいお酒を。お店にも弓の横にお酒コーナー。ディスプレイも兼ねているので頂きものや見た目の美しいお酒を。

僕のお酒のルーツは大学時代に遡ります。
ある日大学街を歩いていて、ふと以前から気になっていたお店によってみることにしました。そのお店は二階にあり外からは中の様子は見えません。
看板には店名とsound midnightとあるだけ。ジャズバー?高そうなお店?
でも気になる…結局ドキドキしながら階段を登りました。

階段を上がると入り口は木製の扉。扉の奥にはこれまた木製の床にテーブルと椅子、そして立派な一枚板のバーカウンター。そこは素敵なバーでした。
ただ後々知るのですが、そこのマスターは「うちはバーじゃなくて飲み屋」と常々言っていました。ともかく今でこそ「素敵!」と思うところですが、当時は「やばい、高そう!」と完全に怯みました。全然そんな感じじゃなかったんですけどね。しかも早い時間だったので店内には僕ひとり。
一瞬迷って結局カウンターに座れず(びびって)、ひとりテーブル席に座ったのを今でもよく覚えています。その日はそんな感じなので早々に退散。
それでも二回目にはちゃんとバーカウンター(のすみっこ)に座り、マスターとポツポツと話などする様になりました。話してみると年は離れていても意気投合するものがあり、その後色々と目をかけて頂きお酒のレクチャーを受ける様になりました。お酒の基礎知識、バーマナー、飲み方。その方は僕のお酒の師匠となりました。

それから早いもので二十年近くの歳月が過ぎました。そのお店も今ではほかの街に移転しています。お店も前より小さくなり、常にバイトの従業員がいたものも今ではマスターひとりで切り盛りしています。それでも不思議なのは、何処にどんな大きさの店を出しても、どんな種類のお酒を出してもそこはその方のお店でした。昔はお酒を教わり、今は個人店の在り方を教えられたような気がします。

あの日以来僕は幸せなお酒ライフを送っています。
見知らぬ街で少しドキドキしながら初めてのバーに入って、しかもそれが二階で外からは窺えない店だったりする時、扉を開けたらあの時のあの店があったりしないか、そんな事を時々夢想します。

お酒の話が長くなりました。
自分の趣味を正当化するわけじゃないけど、なんでも好きなものに一生懸命な人というのはすごく人間的だなぁと思います。
あなたの好きなものはなんですか?

女優としても活躍していたジュリーロンドン。このベストのアルバムは全ての曲が素晴らしい。女優としても活躍していたジュリーロンドン。このベストのアルバムは全ての曲が素晴らしい。

今回のコラムのタイトルは僕の好きな曲名から。
nightにはお酒が含まれているものと勝手に解釈してます。邦題では「貴方と夜と音楽と」。女性歌手によく歌われるけど男目線な歌詞からか、たまに「貴方」が「貴女」とされているものも見かけます。僕のお気に入りはJulie London版。
男目線のちょっと女々しい歌詞も、美女に歌われると意味が変わってきてステキです。

豪華執筆陣。わかり易くためになる最たる例の本。ちなみに内田先生のファンです。豪華執筆陣。わかり易くためになる最たる例の本。ちなみに内田先生のファンです。

最後に最近読んだ本。
晶文社から出ている内田樹 編の「街場の憂国会議」
僕の駄文なんかを読むよりも、是非この本を全ての人に読んで頂きたいものです。

次回は10月5日更新予定です。