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三味線のお話し

第69回 城戸 信行(2014.04.05)

今回は三味線についてのお話です。
私は今でこそバイオリンの仕事をしていますが、家業は三味線屋を営んでいます。演奏する音楽は違えど楽器という物は理想的な音を出すよういろいろ工夫されていているということはバイオリンも三味線も同じです。バイオリンの仕組みのことはよく説明されるのですが三味線の作りについてことを紹介したいと思います。

三味線に使用される木材ですが、胴(ギターでのボディ)は「花梨」、棹(指板、ネック)は「花梨」「紅木」で、かつては紫檀、樫、桑の棹もありました。「花梨」「紅木」とも、昔より輸入に頼っています。胴に張る皮は、「ネコ皮」が最善とされていますが、値段、耐久性等で、現在は「犬皮」がほとんどです。「ネコ皮」と「犬皮」の簡単な見分け方は、胴の裏側の皮に「4つの点」があるかどうかですぐにわかります。4つの点がある方がネコ皮です。

犬皮犬皮

ネコ皮ネコ皮

胴は、基本的には4枚の板を口の字に接着した(丸打ち胴)だけですが、音響効果を高めるために板の内側にジグザグの溝を彫った「綾杉彫り」、二重の溝を彫った「子持ち綾杉」があり、材料代、手間代により高価なものになっていきます。

普通の胴普通の胴

子持ち綾杉子持ち綾杉

金ボソ 二本金ボソ 二本

溝棹は一本の物のように見えますが、棹の修理、修正、持ち運び易さから、三つに分解出来ます(三つ折れといいます)。各部の棹は「ホゾ」よって接合します。棹は音の振動を伝えるための重要な部分ですので、接合部に「金」「銀」を使ったり(「金ボソ」「銀ボソ」)、結合面に「一本溝」「二本溝」とよりしっかり結合するための細工を施しています。

分解前分解前

分解後分解後

最後に三味線にとって命ともいえる「さわり」についてです。

さわり溝 わかりにくいですが、糸の下の楕円形の少しカーブがついてるのがさわり溝です。さわり溝 わかりにくいですが、糸の下の楕円形の少しカーブがついてるのがさわり溝です。

三味線には、三本の糸(弦)を張っていますが、一番太い糸(一の糸)には上駒(ナット)がありません。棹に直に付いています。また上駒の近くの棹の部分に「さわり溝」という細工をしています。この「さわり」は先程申しました棹の振動と関係があり、聴きようによっては、雑音として聴こえるかもしれません。けれどもこの雑音ともいえる音が、日本的情緒を醸し出しているのではないでしょうか。

次回は4月20日更新予定です。