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チェロの横板

第59回 前田 壮学(2013.11.05)
前田 壮学

先日、日本に一時帰国したクレモナ在住の製作者仲間を経由し、チェロの横板が届きました。私がクレモナで、街の加工業者へ加工依頼をしていたものです。
横板を材木屋さんで求めようとすると、ヴァイオリン用からコントラバス用にバンドソーか丸ノコで切断された状態、稀に角材のまま、っていうこともあります。そして、ヴァイオリン用からコントラバス用、といっても、材木屋さんにより厚みや切断面が異なり、特に切断が分厚めな場合は、作る側にとってはとても面倒です。

材料が手元にあるとして、横板の厚みだしの工程を紹介したいと思います。
横板は、鉋(かんな)で厚みを削って行き、最後にスクレーパーで仕上げます。言葉では簡単ですが、横板の厚みを端から端まで均等に削るのは、かなりの根気と集中力が必要です。特にチェロやコントラバスの横板は幅もあり、何よりも長い!チェロ用ですと大体1mくらいの板を使います。しかも1調につき、3~4枚必要です。

上:ヴァイオリン用 真中;1m定規   下:届いたチェロ用上:ヴァイオリン用 真中;1m定規   下:届いたチェロ用

横板の鉋掛けも気を遣う作業です。鉋の刃が良く切れるものでなければ、面が荒れてしまいます。特に虎杢の深い材料は荒れやすいです。私が弦楽器製作を学び始めて間もない頃は、このことでよく泣かされました。当時の私は鉋技術も半人前以下でしたから、面を荒らし薄く削りすぎたり、割ってしまったりと、横板を無駄にすることがしょっ中でした。そのため、以前は普通の鉋の刃だけではなく、櫛刃も使っていました。櫛刃は木目に逆らわずに鉋掛けが出来るので、失敗を防げるのです。今はおかげさまでこの工程であまり使わないで済むようになりました。

鉋の刃と櫛刃鉋の刃と櫛刃

横板の厚みだしの作業はシンプルです。しかし、ヴァイオリンとヴィオラは板が短いのでそれほど苦ではないのですが、チェロとなると大変そうだというのが、少しお分かりいただけたでしょうか。

今回私が材木屋で手に入れた横板は、例に漏れずかなり分厚かったことから、クレモナの加工業者に扱いやすい状態にまで厚みを減らしてもらいました。この業者は、小さい家具から大きい家具まで製作されている家具職人さんですので、いろんな大型木工機械を持っています。日本に住んでいるのに、なぜわざわざクレモナで?とお思いになるかもしれません。クレモナ市内にはこの家具職人さんの工房だけでなく、他にも材木や弦楽器専用工具などを扱っているお店があり、小さな街ですので、自転車で動ける範囲内にその全て収まります。今、私は大阪在住ですが、このようなお店や作業を気軽に依頼できる工房はなかなか見つかりません。 

クレモナという町は弦楽器製作者にとって環境が整った町だなぁと、帰国して三年がたった今改めて感じています。

次回は11月20日更新予定です。

次回、関西弦楽器製作者協会展示会は2018年4月22日(日)です