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猛暑

第54回 百瀬 裕明(2013.08.20)
百瀬 裕明

今年もここ数年の例にもれず猛暑の夏がやってきた。特にこのところの日本の夏は最高気温を毎年のように更新し、いったいどうなってしまうのだろうと思うほどだ。
一方、クレモナの夏はどうかというと、日本にいる人の多くが持つカラッとしててすごしやすいというイメージとは違って意外と湿度が高く、過ごしやすさとはほど遠いところにある。

特に最上階を工房兼居宅とする私は、冬は良いが夏は真夏の太陽がダイレクトに当たるため、午前は工房側に日が差し、午後はずっと部屋側に西日が当たり続ける。そしてレンガやコンクリートの家特有の、日中に当たった陽の熱が夜中もこもり続け、部屋の気温は夜になっても30度を普通に超えている。外気が20度そこそこまで下がるにもかかわらず。
ということで、夏は作業中の木材に汗がしたたり落ちるのを避けながらあたかも修行のような作業風景である。
もちろん、イタリアにも冷房は存在するが、つい数年前までは冷房を使用していない家が数多くあった。が、ここ数年は日本と同様異常な猛暑が続いており、冷房を設置する家が非常に増えたように思える。

イタリアに住んでいるにも関わらず詳しくは知らないが、イタリアの法律では冷房の室外機を道路側に設置してはいけないのか、ほとんどの家が中庭側に室外機を設置している。ここでいう中庭とは、クレモナの市街地は建物と建物がくっついて建っており、それぞれの建物がコの字、あるいはロの字のようになっている場合が多く、その道路とは反対側に位置する囲まれた空間を中庭と呼称している。
庭園のように整備されている中庭もあればただ単に、コンクリートで、自転車置き場になっているようなところも多い。この中庭側に皆が室外機をつけるから、コンクリート地面と相まって気温が上昇し、窓をあけておくと熱風がはいってくることさえある。

薬局の電光掲示板に表示される現在の気温 日の当たるところなので実際の気温ではないが見てるだけで暑さが増す気がする。薬局の電光掲示板に表示される現在の気温 日の当たるところなので実際の気温ではないが見てるだけで暑さが増す気がする。

さて、この猛暑だが、ただ暑いとばかりいっていられないように思う。最近は夏の気温が単に上がったというよりも、日本の気候そのものが変わってしまったのではないかと思われるようなところもある。ここ数年多くの被害を引き起こしているゲリラ豪雨なども熱帯雨林のスコールのように思える。熱帯雨林気候とまではいかないまでもこれまでの日本の気候とは明らかに違う異様さを感じる。

ここ数年の気温上昇は異常である。かなり昔のことになるが、私の小学生のころなどは夏の最高気温はせいぜい28度程度だった。夏休み中の小学校のプール教室が気温が低いために中止になることがあったくらいである。昔は30度を超えること自体がすごいことだった。今は雨が降っても30度を下回ることがないこともあり、そのころのことが嘘のようである。

フロンガスなどによるオゾンホールの拡大を主な原因とした温暖化の問題が騒がれ始めた頃、研究機関は10年後、20年後の温度予測を3度から5度くらいの気温上昇とみていたと記憶している。しかし現実はどうだろうか。今や35度は当たり前。最高気温は40度を上回る、実に10度もの気温上昇である。そのころの研究には新興国の台頭による二酸化炭素などの温室効果ガス排出量の増加などは考慮されていなかったのかもしれないが。

情報が溢れる現在、TPPや消費税増税、憲法改正、原発など数多くの問題に埋もれてしまいがちだが、私はこの温暖化は私たち一人ひとりが早急にとりくまなければならない問題ではないかと思う。今、不況と言われる中、自身を考えることに精いっぱいの人が増えているし、人は現時点で直接的な被害がないとそれを後回しにしてしまいがちだが、この問題は後に深刻な事態になったときにはもう遅いからである。

私も個人として、或いは弦楽器職人としてどうすべきなのか、何ができるのかなど及ばずながら考えていかなければと思っている。

それでは具体的に何ができるのだろうか。
弦楽器製作と温暖化というと共通するものに森林資源のことが一番に思い浮かぶ。
私が木材を仕入れるときは、やはりコストが安くできるだけよい材料を選ぼうとする。材木屋は数多くあるが、それらの木材はいったいどこからきているのだろうか。きちんと管理され、伐採、植林の割合を調整し管理されている森からきているのか、或いはただお金のためにただ木を伐採し販売しているところか、などだ。
ただ単に、「安くて良い木が買えれば出所がどこだろうと自分には関係ない」ではいけないのではないだろうか。きちんと森林の管理をされているところからきている木材かどうかを調べ、そのような材木屋からしか木材を購入しないという姿勢も大事である。

また、私たちは製作の過程で木材の多くの部分を削ってしまう。言い換えれば多くの部分を捨ててしまうということだ。もちろんのこぎりで大きく切りとった木片はとっておいて後にいろいろと活用しているが、ノミやカンナで削った木くずは多くは捨てることになってしまう。暖炉の火種などにはできるのかもしれないが。
もちろんこの無駄にしてしまう部分を何かに使えないかを考えることも重要だが、なにより、貴重な木材を使用しているということを自覚することが重要だと思う。

これら上記したことは、私が今思いつく程度のことで微々たることかもしれないが、こういった意識や行動が少しでも地球環境を守り、貴重な資源を守り、ひいては地球温暖化を阻止する力につながっていくのではないだろうか。
私も今まで以上に使用する木材に感謝しながらより良い、そしてその木材を生かしきる楽器を作り上げていきたい。

次回は9月5日更新予定です。

次回、関西弦楽器製作者協会展示会は2018年4月22日(日)です