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土足

第42回 天野 年員(2012.10.20)

突然、変な話題で恐縮ですが、ご存じのように西洋では家に入るのに靴を脱ぎません。家の中と外の境が靴を脱ぐという行為で明確に分けられていないのは習慣なのでしょうが、階段やちょっとした段差に自然に座ったり手をつく彼らを見ていて、道路や地面が汚いという考えもあまり持っていないように感じました。

僕はイタリアに住むようになって最初の数カ月は、入口あたりで上履きに履き替えていました。でも、ぎこちなく靴を脱ぐ友人に申し訳なく思い、やがて靴のまま生活するようになりました。やってみると特に床が汚れるわけではなく、便利で快適なんだと実感してすっかり慣れてしまいました。最後まで出来なかったのは、高い所にある物を取るのに、椅子の上に靴のまま登ることです。躊躇なく靴のまま登る先輩の日本人を見て、語学力だけではない差を感じたのを憶えています。やっぱり自分は何年経っても日本人だなと・・・。

帰国して京都市で工房を開いて三年目になりますが、予想した以上に沢山の方がご来店くださいます。で、ふたたび気になるのが、玄関でスリッパに履き替えてもらうことです。特に女性はブーツの方も多くて面倒そうですし、ファッションの一部を切り離すようで申し訳なく思います。帰られる際の挨拶の時も、靴を履き替える「間」はどうもリズムが悪く、僕自身も好きではありませんでした。

そのためにと言うわけではないのですが、11月は引っ越しです。床はタイル張りにしましたので、靴のままお上がりください。ご来店お待ちしております。

次回は11月5日更新予定です。