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工房の見学・体験

第163回 河村 盛介(2018.08.05)
河村 盛介

私が工房を構えている東京都荒川区では、「モノづくりの街」として、区内で製造、販売されている優れた製品を区の内外に紹介するという取り組みを行っています。
具体的には、見学・体験ができる工場や工房を「モノづくり見学・体験スポット」として紹介し、一般の方が実際の製造工程を見学したり、モノづくりの体験をできるようにしています。また、登録されたスポットへの見学・体験ツアーや、いくつかのスポットが集まる展示・実演・体験イベントなどを開催しています。

「区が発行するモノづくり見学・体験スポットのガイドブック」「区が発行するモノづくり見学・体験スポットのガイドブック」

現在の場所に工房を構えてから5年目になりますが、先日、区の方に声をかけていただくまでは、区がこういった取り組みをしているということを全く知りませんでした。
荒川区を含めた東京の下町といわれる地域は昔から職人の多いところですが、現在でも様々な分野の職人さんが沢山いらっしゃるようです。区が発行するガイドブックを見ると、登録されたスポットだけでも、アクセサリー製作、リヤカー製造、提灯文字、義肢・装具、七宝、皮革小物製造、手書き友禅、雛人形製作、べっ甲細工、三味線、木版画摺など様々です。

普段は工房にこもって黙々と作業しているので、一般の方に実際の作業を見ていただく機会はほとんどありません。また、バイオリンは0.1mm単位の精度で行う作業が多く、大変神経を使うので、いつでも自由に見学してくださいと言うのはなかなか難しいということもあります。
ですが、それでも工房前の通りから興味深そうに工房を眺めている方を見かけると、入ってきていただけたら色々とお話しできるのにな、と思ったりもします。

テレビや雑誌などでは沢山ある工程のほんの一部しか紹介されませんので、実際にバイオリンがどうやって作られていくか、全体の細かい作業を知るということはなかなか難しいのではないでしょうか。
お客様とお話ししていると、例えばパーフリングは表板、裏板の縁に黒く線を描いてあるだけだと思っている方が時々いらっしゃいます。実際は、表板、裏板の縁に細い溝を掘って、3枚の板が張り合わされた細い木を埋めてあるのですが。
バイオリンにほとんど関わりのない方ですと、日本でバイオリンを個人で、しかも荒川区で作っているということに驚かれる方もいます。

実際の製作工程や木を削る音、工房の雰囲気などをもっと多くの方に知っていただきたいというのはあるのですが、自分から見学会や体験会などを企画して発信していくことが苦手なので、今回このような区の取り組みを教えていただいてとても良かったと思います。
ガイドブックを見ていると知らない分野の職人さんも多く、どんな工房なんだろうとか、どうな道具を使っているんだろうとか想像し、機会があったら自分も体験に参加してみたいという気になってきます。
次に発行されるガイドブックには私の工房も紹介されると思いますが、それを見た方も同じように興味を持っていただけたらいいなと思います。

次回、関西弦楽器製作者協会展示会は2019年5月2日(木)~3日(金)です